こんにちは。ポップジャパンの石川です。
引き続き、広島市西区の横川商店街からお届けしております。
前回の記事では「横川カンパイ!王国」の建国について、お話を伺い横川という地域の持つアートな一面やマスコットキャラクター『トマトン』の秘密について教えていただきました。
盛大なセレモニー。村上さん。。。
『なんとなく』で生まれたトマトンも国王に。横川’nドリームである。
しかし横川の魅力や奥深さは、まだまだこんなものではありませんでした。
今回ののぼりラボでは、引き続き村上さんから横川の歴史や文化について伺いました。
「前回に引き続き、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします。あれ?もう建国してしまいましたけれど、また横川のことを書くんですか?」
「前回の記事が非常に好評だったことに味を占めてしまいましたのと、まだまだ横川の魅力に迫りきれていないなと思いまして、こうしてお話を聞きに来ております」
「そうですか。横川カンパイ!王国といえば、ポップジャパンさんに作っていただいた案内MAPものぼり旗も好評ですよ。ありがとうございます」
「それを聞いて安心しました。僕たちが作っているものはお客さまの役に立って初めて意味があるものですからね。役に立たないのぼり旗なんてホント意味ないですよ。あれは本当にダメ!」
「分かりました。一旦落ち着きましょう」
役に立っているのぼり旗の一例。
ゾンビだけだと思うなかれ。
よこ『がわ(川)』ならではのイベント「がわフェス」
「「ゾンビナイト」の話題が多くなってしまって恐縮なのですが、横川でああいった大規模なイベントを行おうとしたきっかけはあるのでしょうか?」
「そうは言っても、横川商店街の活動がダイナミックになってきたのはゾンビナイトからなんです。そもそもゾンビナイトも広島国際アニメーションフェスティバルの事務局長さんたちから横川シネマを貸して欲しいという申し出がスタートでした」
「前回の記事でも書きましたが、横川シネマの使いやすさに注目されたってことですね」
「広島国際アニメーションフェスティバルは2年に1回の開催ですので、開催されない年は過去の名作を上映させてほしいとのことでした」
「なるほど。広島国際アニメーションフェスティバルはポップジャパンも今年からお手伝いさせてもらっていますが、「開催される年」と「名作を振り返る年」によって、イベントの連続性や持続性が感じられるようになるのですね。横川シネマ的にも嬉しい話しですね」
「と言っても、「予算が無いからタダで貸して欲しい」という話しだったのですが」
「……」
「それでもいいお話には違いないですから「協力しますよ」ということになって始まりました。そしたら先方が「ゾンビはお好きですか?」と言い出したんです」
「ジェットコースターみたいな話の展開ですね。アニメの話してたと思ったら急にゾンビですか」
「流石に「どういうことですか?」と聞きました。そしたら「自分たちはゾンビが好きなんだけど街に繰り出したい」って言いだして」
石川「もう、なに言ってるのか分からない」
村上さん「で、「横川ならやってもいいんじゃないですか」って言うんです」
ゾンビナイト
石川「スゴいなぁ。横川のポテンシャルを最大限に認めているのか、大いに誤解しているのかのどちらかですね」
村上さん「まぁ、でも確かに面白そうなので「やってみようか」ってなりましたけど」
石川「そのブレない「おもしろさ至上主義」は流石です」
村上さん「そしていざイベントがスタートすると、我々が今まで知りえなかった人脈から、例えばデジタルコンテンツに強い人達が集まったりして、想定以上のイベントになりました」
石川「人の力、人とのつながりが成功を招き入れたと言えますね」
村上さん「まぁ、そこまでなら良かったんですけど、「横川は夏のイベントが無いですね」って言い出した人がいたんですよね。今だから言いますけど」
村上さん
「正直「放っといてくれ」て思いました」
石川「そんな」
村上さん「だけど「春夏秋冬そろっていたほうが良いですよ」って言われちゃうと、「それもそうかな」って思っちゃって、去年(2017年)に『川を使ったイベント』というものをやってみました。通称『ガワフェス』ですね」
石川「こちらも結構好評だったというお話を聞いています。確かに『横川』という名称なのですから、夏に川を使うというのはいいアイデアでしたね」
村上さん「昔は横川って、水運の拠点だったんです。県北の方からイカダや船で物資を運んできたり、瀬戸内からは島の産物を大雁木で水揚げしていた時期がありました。そのころは横川橋に近い地域の方がどちらかというと活気の中心だったんです」
横川商店街
石川「それが今では、JR横川駅の方が街の中心といった感じですから駅とか中継地というのは街の発展に大きな影響を及ぼすということがよく分かります」
村上さん「ですから、我々としては街全体に活気を持たせるには、川のある方にも人の集まるポイントが増えてくれたらいいのにと思ってて、以前から『川を使って何かできないかなぁ』という考えはもっていました。これが本当に盛り上がって、「河岸の開発も考えなきゃいけないな」って行政も本気になってくれました。「川の駅を持ってこようか」なんていったりして」
石川「商店街のイベントが行政を動かしそうなパワーを持つというのは凄くいいですね」
村上さん「もちそん、そこには色々とハードルはあります。ですが、河岸を活用するという方向性は共有できたので、やって良かったと思いますね」
石川「成功が成功を呼び込む理想的なカタチができていると思います」
map
村上さん「お陰様で「横川は色々なことをやってる」と評判になって、かよこバスを復元したり、女子サッカーチームを立ち上げたり、バレンタインには花火を打ち上げたり、色々なことをやることになったワケなんですけどね」
石川「あれ?もしかして、ちょっと後悔してませんか?」
実は横川が日本のバス発祥の地だった!?
かよこバス
石川「『かよこバス』ってJR横川駅前に展示してありますよね?あれは復元されたものなのですか?」
村上さん「きっかけは広島電鉄の停留所を駅前の敷地に移動させることだったんです。昔は横川駅前の停留所って国道の真ん中にあったんですけど知ってましたか?」
石川「いえ、知りませんでした。僕が横川に住んでいたころは既に今の横川駅前の風景でしたし」
村上さん「ですので、以前は路面電車に乗ろうとすると、横断歩道を渡らないといけませんでした。ですが大きな国道で分断されていた商店街としては、真ん中に停留所がある横断歩道のお陰で人の往来があったので、停留所を動かすという考えは無かったのです」
路面電車
石川「色々な思惑があったというワケですね」
村上さん「だけど何しろ交通量が多くてですね、あるとき地域の方が「電車に乗るのも命がけじゃけの」って言ってるのを聞いてしまったんです」
石川「なるほど。商店街としての『良きこと』が必ずしも地域住民の皆さんのためにはなっていなかったと」
村上さん「我々もエゴを捨てなければいけないと気付き、電停の移動に同意しました。そしたら市の方も張り切って「立派な駅前にしますから」ということで、その時に『日本のバス発祥の地』という記念碑を立てて欲しいと言いました」
石川「僕も知らなかったのですが、横川ってバス発祥の地だったんですか?」
村上さん「中国新聞でも取り上げられていましたし、色々な資料が残っています。横川から可部地区の方に人を運んでいたそうです。「かべ」と「よこがわ」の頭文字を取って「か・よこ」。「かよこバス」というワケです」
※バス発祥の地に関してはバスの定義などをめぐり、様々な説があります。
かよこバス
石川「すごいですね。それは是非とも記念碑を立てなければいけません」
村上さん「なんか担当の人も張り切っちゃってですね。「記念碑と言わずに東京・新橋駅のSLみたいに、あんなのを作りますよ」って言い出したんです。もう「やった!やった!」て、みんな大喜びですよ」
石川「話がブワっと膨らみましたね」
村上さん「その時に、一枚だけ現存していたバスの写真を元に広島市立大学芸術学部の先生に記念碑としてのモニュメントを作りたいから設計図を起こして欲しいと依頼しました」
石川「話がドンドン進みますね。当時の活気が伝わるようです」」
村上さん「まぁ、最終的に当時の市長からボツにされちゃったんですが」
石川「……」
石川「ごめんなさい。急に話が見えなくなりました」
村上さん「なぜだか「そんなモノ作るな」ってなっちゃったんですよね。いや私たちも「騙したな!?」て怒っていたんですけど、そんな最中に広島市立大学の先生が『横川商店街の中を疾走するバスのCG』を製作して見せてくれたんです。感動しました」
石川「先生は本当にやる気になってくださっていたんですね。本気度が伝わります」
村上さん「情熱だと思います。そこで「一度はボツになった話ですが、皆さんがやる気があるのならば僕も手伝います」と言い出しまして、正直、僕たちも作るとは思っていなかったのですが、そのCGを見せられたら皆が『やろうか!』って気持ちになりました。」
石川「おぉ、この逆境から立ち上がる姿!熱い!映画みたいだ!」
村上さん「夜な夜な先生のアトリエに仕事が終わったら集まって、先生の指導のもとでバスを製作していました。私みたいな不器用な人間はひたすら木を磨いていましたよ。冬の寒い日でした」
石川「木を磨くのですか?」
村上さん「本物のバスはケヤキでボディが出来ていたのですが、それは高価で手に入りません。そこで、安い木材を仕入れてきて『磨けばケヤキになる』と言われて、何日も何日も磨きました。あれは本当に辛かったなぁ」
石川「そんな皆さんの努力と苦労と汗と涙の結晶だって知ると、背筋が伸びる思いです」
村上さん「車一台作るってなると、私たちも何も知らないですから、マツダに相談に行ったこともあるんですよ」
石川「マツダって自動車メーカーのマツダですか?広島ならではのエピソードですね。確かに車作りを聞きに行くには一番なところですよね。」
村上さん
「丁寧に対応してくださいましてね。「試作車一台でもまともに制作するとン千万円かかりますけど、地元広島なんで2割まけますよ」って言ってくださいました」
石川「2割かぁ…」
村上さん「それで流石にお金をどうしようかって話になったんですけど、寄付を募ったりしていたら、新聞でも取り上げていただいて「成功させよう」って気運が高まってきたんです」
石川「盛り上がるなぁ。これはもう映画化決定!」
村上さん「最終的には思っていた以上の金額が集まりまして、むしろ余ってしまう程でした。そこで「この残ったお金をどうしようか?」と考えていた時に、『バスのために頂いたお金なのだからバスのために使おう』となり、映画を撮ることにしました。それが「横川サスペンス」です」
石川「あ、もう映画化してたんですね」
女子サッカーチームだってある
アンジュビオレ
石川「そんな横川商店街の「ノリの良さ」によって女子サッカーチームも発足したんですよね?」
村上さん「もう7年目になりますが、そのころ商店街でもサッカーを応援しようって活動をしていました。そしたら広島県サッカー協会女子部のトップがいきなり来られて、女子サッカーチーム立ち上げるのを応援してくれないかと言われたんです」
石川「基本的に何か事態が動くときって突然ですね」
村上さん「その時の話では選手の住まいと職場だけ用意してくれたら、広島から出ていった優秀な選手が戻ってきてくれてあっという間に強いチームができますよと言われたんです」
アンジュビオレ
村上さん「そうは言っても、これは商店街だけで聞ける話ではありません。地域の人を集めて、皆で話を聞いたら体育協会の人たちが『断る理由は無いなぁ』って言い出しまして、まぁ、住まいと職場の世話くらいならできるだろうと言うことでスタートしました。」
石川「(断る理由が無ければオッケーなんだ)」
村上さん「で、実際にチームが発足することになったら、当然ユニフォームはいるし、監督も雇わなければいけません。そしてリーグへの登録がいります。そう言われても、ね。誰がやるのかって話になると…」
石川「はい。まぁ、そうですよね」
村上さん「いつの間にか私たちが主体で全部やることになっていました。だけど周りはそんな経緯や状況なんて知りません。だから商店街が売名でやってると誤解されていたこともあると聞きました」
石川「誤解とは言えそんな状況を乗り越えて、今のアンジュビオレは街ぐるみで支えられる素晴らしいチームになっています。これは本当に凄いことだと思います」
アンジュビオレ
かつて「見捨てられた町」だった横川に根付く気概
横川商店街
石川「それにしても横川商店街のみなさんのパワーに圧倒させられるお話ばかりでしたが、このパワーの源は一体どこにあるのでしょうか?」
村上さん「実は横川が発祥の企業って多いんですよね。モルテン、ミカサ、オタフク。フタバ図書やフレスタもそうです」
石川「言われてみれば確かに」
村上さん「そんな横川に興味を持たれて歴史を詳しく調べて下さった方がいたのですが、そのレポートによると、どうも横川は『見捨てられた街で、庶民が助け合いながら勝手にワイワイしていた』と、共助の精神を持ちながらお上に頼らない気質が根付いているとありました」
石川「歴史の中で横川って見捨てられていたのですか?」
村上さん「広島城って平地に建っていますよね。しかも広島は沢山の川がある街ですから、お城を水害から守るために広島城の方の石垣は高めに、そして横川の方は低めに作ってあるんです」
石川「石垣の高さまでは気にしたことはありませんでした」
村上さん「ですので、大雨が降るとあえて横川の方を水没させて、お城を自ら守っていたんです。だから当時の行政から見たらどうでもいい土地で、長い間放ったらかしの地域だったんです」
石川「初めて聞きました。興味深いですね」
村上さん「住んでいる側からすると「お上は守ってくれない。だけど干渉もしない」という状態ですから、長く自分たちで好き勝手にやってきました。そんな時代から受け継がれるDNAが、この土地にはまだ残っているのかも知れません」
石川「横川に満ち溢れるパワーの秘密を知った気がします」
村上さん「我々が何か行動を起こす時には、必ず地域の方々と一緒に動いているという活力はそこから出ているのではないかと思います」
石川「そういった商店街と地域が一つにまとまらないと、こんなに幾つものイベントや企画を成功させられないですもんね。そうしたことで横川という地域に対して外からの注目も集まるし、人も来るしといい流れが出来ているのだと思います」
取材を終えて
2回にわたって、横川商店街の魅力に迫ってみました。
村上さんのおっしゃる通り、横川の街には行政ではなく、地域が主体となって「何かおもしろいことをやってやろう!」という気概が満ち溢れていて、その源泉に近づくことが出来たのではないかと思います。
「おもしろければ全力で取り組む街」そんな横川商店街。
そのディープさ是非!肌感覚で味わいに横川商店街にあそびに来てはいかがでしょうか。
横川商店街
その時は横川マップを参考にされたら最高だと思います。