のぼり旗の歴史は日本の歴史と深く関わり、独自の文化として発展してきました。
のぼり旗は人々の生活と共に進化する中で日本の『見慣れた風景』の一部となりました。
歴史に裏打ちされた実力を持つ屋外広告として、のぼり旗は今でも第一線で活躍しています。
のぼり旗は日本が誇る独自の広告文化なのです。
しかし、そんな屋外広告のスター選手(=のぼり旗)。
海外で大活躍しているという話を聞いたことがありません。
いわゆるフラッグ(旗)はあるみたいですが、目印としての役割はあっても屋外広告として設置されているワケではありません。
海外にはのぼり旗が無い
何故なのでしょうか?
日本では独特の存在感を持つのぼり旗ですが、外国では通用しない様子。
実は、海外にはのぼり旗以上に効果的な「ご当地広告」があるのでしょうか。
のぼり旗は日本独自の文化として発達してきました。
それなら日本以外でもお国柄に沿った広告文化が発達しているのかも知れません。
今回は『外国の人々にのぼり旗がどう捉えられているのか』を調査し、のぼりの海外進出の可能性について調査しました。
のぼり旗の印象は上々。実はのぼりってインバウンド向き!?
まずは日本国内ののぼりを目にした外国人の反応から。
ここ数年、訪日外国人旅行者数は増加を続け、2013年には年間で1000万人を突破しました。
さらに2015年時点では年間1900万人に到達しており、怒涛の勢いで外国人観光客数は増えています。
日本政府は2020年までに、訪日外国人旅行者数を年間4000万人にまですることを目標として掲げていますから驚きですね。
これを単純に考えると、外国人観光客に向けた屋外広告のマーケットも4000万人規模になると言えます。
そんな多くの外国人勧告客の目にのぼり旗はどう映るのでしょうか。
インバウンドという言葉も当たり前になってきていますが、そんな中で日本独特の広告であるのぼり旗について、どのような印象を持たれているのか実際に声を聞きました。
日本のように、科学技術のリーダーだと認識されてる国が、こういった昔の文化を、他の国のように簡単に捨てないのは、本当に興味深いことだと思う。<アメリカ 27才>
旗の広告はクールだし落ち着くしいいと思う 😀
<スロバキア 年齢不詳>
俺は好きだね。彼らが風に揺れることで、「僕はここだよ」って呼んでることに気付かされるんだよ。<ブルガリア 30才>
外国人から見て、のぼり旗は概ね好意的に見られています。
やはり他の国ではあまり見かけない広告方法として珍しいがられていますね。
『その国独自のもの』を見たり体験することは大きな観光目的です。
『日本的な何か』を見たくて来日する人とって、のぼり旗は日本を感じることができるアイテムとして捉えられています。
海外にのぼり旗がない秘密はカタチとコトバの親和性。
外国人観光客の方々にのぼり旗は「クール」や「綺麗だ」と評判でした。
のぼり旗を見て気を悪くする人も少ないようです。
では何故、外国にはのぼり旗が無いのでしょう?
のぼり旗の起源は平安時代とされていて、戦国時代を経て江戸時代に広告として確立されてきました。
たしかに『のぼり旗』は日本独自の広告媒体であり文化です。
しかし旗(フラッグ)は海外にもたくさん掲げられています。
これらを使った広告なんて、だれでも考えつきそうなものですが、海外の屋外広告と言えば看板やオブジェばかりです。
フラッグを用いた広告展開もあるにはあるみたいですが、少数派数。
日本ののぼり旗ほど普及していません。
フラッグを利用したものも多少はあっても、のぼり旗ほどの数や規模ではない。
『のぼり旗って便利ですよ』と普段から言っている身としては、不思議な話です。
しかし実はその答えが「日本語が縦書きだから(外国は多くが横書きだから)」という理由だったとしたら、ちょっと驚きですよね
この「のぼりラボ」も含めてですが、最近では横書きで書かれている日本語を目しても違和感を覚えませんが、本来日本語は縦書きで記述されてきました。
とは言え現在では、雑誌の誌面上などで『タイトルは横書きだけど本文が横書き』なんて自在に組み合わせも珍しくありません。
この縦横どちらの記述にも対応できる言語、世界的にも珍しい柔軟性です。
そして考えたいのはのぼりの形状。
縦長ですよね。
『縦長の媒体』と『縦書きのメッセージ』。この相性が抜群です。
これが他の横書き言語ですと、組み合わせが難しくなります。
横書きの文章を無理やり縦長ののぼりに記載してみると、改行が激増してデザインも破綻します。
広告的にもメッセージが伝わり辛くNGです。
だったらのぼり旗を横長にしようよ
と考えそうですが、安定性が極端に悪くなります。
ましてや店頭や路上脇に設置するのですから、大幅に飛び出す横長の旗は接触や転倒、衝突の危険が増します。
・看板や横断幕といった横書きと相性が良い媒体がいくらでもあって、あえて縦長の媒体を選ぶ理由がなかったこと。
日本以外で旗を用いた屋外広告が普及しなかった原因の一つは、横書きという言語文化が大きく影響していたのです。
今後のぼり旗に求められる国際感覚。新たな価値をつくりだす。
のぼり旗の発展に言語と形状の親和性は大きく関係しています。
しかし、それは同時に横書きの文化圏では発展が難しいことも意味します。
のぼり旗を海外で展開しようとするには解決しなきゃいけない問題が山積みですね。
しかし先にも書いたように、海外から日本に来る外国人観光客は年々増え続けていて、その目的は『日本独自の何か』。
海外の人にのぼり旗を見てもらい好印象につながるチャンスは、実は国内にあるほど大きいと言えます。
極端な例で言うと、外国人勧告客向けに「SUSHI」と書かれたお寿司屋さんよりも、あくまで日本人に向けて商売しているお寿司屋さんで食事をすることに価値があると考える観光客は今後より増えてくると思われます。
つまり外国人観光客の人々は「日本で寿司を食べた体験」それ自体でなく、それがライトかディープかといったように「体験の価値」を求めているのです。
同じことはのぼりにも言えるかも知れません。
日本語に並べて外国の言葉が記載してあることは確かに親切ですし便利です。
それは確かに「外国人観光客には親切なのぼり旗」かもしれませんが、日本語の縦書き文化とベストマッチングした「日本独自ののぼり旗」とは言えないでしょう。
従来の日本語だけののぼり旗では、日本語に不自由な外国人観光客の方々に情報を伝えることは不可能です。
しかし、そこに的確なデザインや画像を加えることによって、イメージを想起させることは可能かもしれません。
そして、イマジネーションを存分に膨らませている外国人観光客に向けて適切な説明を提供できる横書きの広告物があったなら(様々な言語に対応しているものです)。
のぼり旗を通じて日本を体験してもらうことができるのです。
外国人勧告客の爆発的な増加を期待する以上、ガイドサインや注意書きなどあらゆるテキストに外国語表記を加えていくのは当然です。
意思疎通の不備による外国人勧告客との不毛なトラブルを回避するためにも、絶対に必要なことでしょう。
しかしその心がけ故に本来の日本らしい風景という魅力が失われてしまっては本末転倒。
観光資源として日本の原風景を保ちつつ、同時に間違いの無い情報を外国人観光客に提供するというバランス感覚が問われています。
安易に歩み寄るのではなく、外国人観光客が求める「日本らしさ」を演出し観光の中で「日本を体験した」と深く実感してもらうこと。
その有効な手段の一つとして大いに活躍できる可能性をのぼり旗に感じました。