シリーズ「屋外広告は風景だ」 重要伝統的建造物群保存地区を巡って探る「屋外広告のあるべき目立ち方」とは?- 広島県竹原市-【第一回】

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「のぼりラボ」では、屋外広告の正しい知識やトレンドを発信するため、これまでさまざまな視点の情報を公開してきました。

    参考記事
  1. のぼりマーケットは4000万人規模に膨らむか!?外国人観光客はのぼりの向こうに「JAPAN」じゃなくて「日本」を見てる。
  2. のぼりを設置する最適な間隔は180cm?社内アンケート調査を経てさらに一歩踏み込んだ正解値を追った。
  3. のぼりはもう時代遅れなの?五感を刺激するデジタル屋外広告事例からのぼりの未来を考えてみた。

しかし真相を追求しようとすればするほど、心の中にある種の疑問がつのります。
「これは本当に現実的と言える情報なのか?」
「データは理解できたけど、実際のところはどうなんだろう?」
公開されている情報や数字、残されている貴重なデータを疑うわけではありませんが、そこに実感が伴わないこともまた事実です。
「屋外広告の現実」として、例えば景観が保護されている地域での実情はどうなのか、のぼりは無くともフラッグは利用されている海外の看板を中心とした掲示物の効果はどうなのか、などといった情報を、私たちは自らの肌感覚として、自分の目と耳で体験したいという欲求を抑えきれなくなっていました。

そこで、このたび発足したのが「のぼりラボ取材チーム」です。
屋外広告を取扱うプロとして、これから全国津々浦々における屋外広告の実情を、ガンガン取材し、ドシドシ公開していく取り組みをスタートさせました。

インターネットが発達したことによって、今では誰もが簡単に、世界中の情報へアクセスすることが出来るようになりました。
それに伴って情報自体の持つ価値がどんどん失われていっています。
そのような状況の中で私たちは、過去ののぼり等の屋外広告における根源や論文、各地域の歴史などの「第一次情報」へ積極的に触れて行き、実際に自ら体験することでしか得られない情報を、本当に価値のある有益なコンテンツとして発信していきます。

そのためにまず一つの研究テーマとして、「周囲の風景に沿った屋外広告のあり方」を掲げます。
「屋外広告はただ目立てば良いものばかりではないはず。効果的で意味のある「目立ち方」とは何なのか?」
そこをもっと深く探ってみたいと思いました。
そして、その足がかりとして、主に「重要伝統文化建造物」に対しての取材を重ねながら、その答えに繋がる企画を進めていくことに決めました。

法律や地域の取り組みによって景観が保全されている地域で、屋外広告はどのように捉えられ、扱われているのでしょう。
データからは読み取ることの出来ないリアルを拾い上げていきたいと思います。

石川編集長が屋外広告の可能性と真剣勝負!
第一回 竹原市町並み保存地区(広島県) その①

記念すべき第一回目は、安芸の小京都とうたわれる広島県竹原市をピックアップしました。
古くから残る建物と景観を保存する町並みは、映画やドラマ、アニメなどの舞台としても、よく利用されています。
映画「時をかける少女(1983年版)」、NHKの朝ドラ「マッサン」、アニメ「たまゆら」の人気もあり、全国から観光客を集めている、根強い人気のあるスポットです。

そんな観光資源として、底知れない魅力を持つ町並み。
恐らく自治体や現地の店舗経営者は、厳格なルールに則って、「街並み保存」に取り組んでるんじゃないかと想像されます。
では果たしてどのようなルールがそこにはあるのか?
店舗経営としてどう屋外広告に向き合っているのか?
…と言うか、むしろ屋外広告とか必要ないんじゃないか?

これはもう取材に行って生の声を聞くしかないと私たちは判断。
そこで早速、ポップジャパンラボ編集長・石川書右衛門が、新しい発見と屋外広告のリアルを求めて、実際に現地を歩いてみました。

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まずは町並み実験、勝手にごめんなさい !

まずは取材の前の事前準備として、『竹原の街並みとのぼりの親和性』について、簡単にシュミレーションしてみました。
実際に現地でのぼりを立て、撮影が出来れば最高だったのですが、そんな手間も時間も許可も無かった私たちは、CGを用いて比較検証を行います。
便利な時代になったものです。

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ご覧になってみていかがでしょうか?
のぼりを立てることで、一気に町並みの雰囲気は損なわれることが、画像によって証明されました。
デザインについて、今回は敢えて景観も何も考慮しないものを設置しましたが、街並みの風情を一瞬で吹き飛ばすこの破壊力。
「周囲の風景と実情を考慮した屋外広告について考える重要性」と、「何も考えずに立てられた屋外広告による景観への影響」について、改めて認識させられる実験結果となりました。

保存の条例は1981年に制定。35年目の成果は?

竹原市について少し紹介します。
広島県竹原市は、瀬戸内海の交通・海運で栄えた港町。江戸時代には製塩で全国に知られました。
キャッチフレーズは「安芸の小京都」。
「小京都」と呼称される場所って、全国に幾つもあるのですが、実は小京都を名乗るにも一定の規定があることはご存知でしたか?
何でも全国京都会議というものがあるらしく、古い町並みや風情が、京都に似ていると判断されれば京都から承認され、晴れて「小京都」としてアピールできるというシステムになっているのだそうです。
ちなみに全国で小京都をうたうのは、全国京都会議加盟自治体が公認する町で約50か所。当然ながら竹原市も、この全国京都会議に加盟しております。抜かりはありません。流石です。

また竹原市では、1981年に、「伝統的建造物群保存地区」の保存条例が定められました。
遡れば、もう35年続く長い取り組みなのですね。
その甲斐もあって、2000年には、国土交通省の「都市景観100選」にも選ばれています。

では、そんな「竹原市街並み保存地区」の特色はどこにあるのかと言うと、それはどうやら独特な建物の並び方、そして外観の造りにその魅力的な風景を作り出しているヒントがあるようです。

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町並みの風景は、絵画のフレームに似ていると言われます。
写真では奥に見える緑の山も取り込み、屋根の形と配置が平坦でなく、変化するよう組み合っているのが分かるでしょうか?
屋根と空の境目がジグザクになっていますね。
また通り側へ庇(ひさし)がせり出すことで、建物自体の表情にも、明るい部分と暗い部分といった変化が生まれています。
そんな建物も江戸時代、明治時代、昭和時代と、様々な時代に建てられたものが、一つの景色の中で複雑に入り混じっているのですが、その不統一さが不思議に違和感なくバランスを保ち、町並みの風景を作り上げているのです。

また、この地区にある建物の壁や窓には、格子がたくさん取り付けられています。
この格子は竹原格子と呼ばれ、町並みの景観に欠かせないものです。
これも竹原の町並みを楽しむ上で大事なポイント。
またお宅によっては、その格子に竹細工を飾りつけたりなんかして、
このちょっとした風情に竹原らしさが現れています。

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では、そんな町並みにおける保存条例で、
どのようなルールが設定されているのでしょうか。
かいつまんで紹介してみますと…

・保存地区の中で建物を新築・増改築・移転・除去する場合、また建物の修繕や模様替えなどの変更、景観にともなう木材の伐採や土地の造成・変更については許可が必要。(しかし建物以外の工作物や仮設物においては許可不要。)
・外観の変更については、町並みの特性を維持するように。
・罰金や指導の違反規定もある。

とは言っても、このように縛り付ける内容ばかりではありません。
保存地区内の建物管理・修理・復旧には、助成金も受けられるようで、やはり目に見える部分の保存については、町ぐるみ、官民一体で努力されているようです。

現地レポートで発見と気づきの連続。
観光地ならではの恩恵と切実な問題を知りました。

さて、ここからは実際に現地の声をヒアリングしていきます!
今回の取材では、実際に町並み保存地区で、営業されている店舗をいくつか訪問。
そちらで貴重な実感とお話を聞くことができました。

最初に飛び込みでお邪魔したのは、町並み保存地区の入口辺りにある「大津谷食品」さんというお店。
地元竹原市のこんにゃくメーカーの飲食店舗です。
店名が「大津谷食品」で会社名もまた「大津谷食品」。同じ名称で展開するとはユニークな会社さんですね。
売りは自社製のこんにゃくをふんだんに使用したコース料理やデザート感覚のメニュー。
これはもう間違いなくヘルシーです。

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店舗は賃貸した建物を利用されており、のれんと提灯が目印になっています。
保存地区の町並みにも、自然と違和感なく馴染んでいる印象ですね。

店主様に「保存のルールは意識されているのか」と聞いてみると、
「そんなに感じませんよ。もともと町並みの雰囲気に合う店ですから。ただ観光客のみなさんに喜んでもらえたらと、顔出しの看板を出したんですが、すぐに撤去してほしいと市の指導がありました。当社のこんにゃくキャラクターで、子供さんが顔を出して写真も撮られたり、好評だったんですけどね。演出がふさわしくなかったのかなぁ。今その看板は竹原駅近くの別店舗で使っています」との回答でした。

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他にも、
「テイクアウトができたらいいなと思い、格子を外して店外販売も考えています。こちらは申請を出しているので、今検討していただいています」
といった様に、希望は、その都度行政の方に出されているようです。
「顔出し看板はNG」といったあたりに、この町並みの雰囲気を保つ上で守らなくてはいけないラインがありそうです。

こちら、大津谷食品さんの開店時間は11時から13時ぐらい。月曜日が定休日です。

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町並みを少し進むと、華やかな小物や雑貨が並ぶ「ぎゃらりい梅谷」さんが見えてきます。
残念ながらこちらでお話を聞くことはできませんでしたが、撮影の許可はいただきました。

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建物の外壁や扉がないため、置かれた雑貨の存在感だけで、十分にお店が目立ちます。
店名看板も木板、ギャラリーを敢えてひらがな表記にすることで、お店の名前と雰囲気が柔らかく融和しています。

こちら、「ぎゃらりい梅谷」さんは、竹原市を舞台にしたアニメ「たまゆら」では、なんと同じ店名で作中に登場されています。
因みに「たまゆら」とは2010年から2016年にかけて、ビデオ販売やテレビ放送、映画公開されたアニメ作品。
竹原市内にある架空の高校写真部で繰り広げられる日常を描いた物語なのですが、町並み保存地区がメインの舞台として設定されています。
ですので、写真好きなたまゆらファンが、被写体として、町並み保存地区を写真に収めようと訪れることが増えているらしく、それまでの観光客層とはまた少し違った、新しい世代の観光客も、呼び込むきっかけになっているようです。

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何しろ町並みが、ビデオ・DVDのパッケージイラストの背景として、バリバリ描かれているだけに、全国のたまゆらファンにとって、ここはまさに聖地的な存在と言えるのでしょう。
作中での再現具合の高さも相まってか、保存地区を訪れた熱心なファンからしてみると、まるでアニメの世界に入り込んだような感覚を覚えるのかもしれませんね。

また「たまゆら」という聞きなれない言葉の意味ですが、これはたまたま写真に映りこむ小さな水滴のような光のことらしく、アニメの中でも「たまゆら、写ってそう?」なんてセリフが度々出てくるのだそうです。
写真好きなファンの人たちも、或いはそんな「たまゆら」を求めて、カメラを構えているのではないでしょうか。

—–

さて、このような形で竹原市町並み保存地区の取材は、まだまだ続きます。
次回はいよいよ、NHK朝ドラでも有名になりました竹鶴酒造様が登場!
しかしそこでは、我々の予想とは大きく違った、観光地のあり方について驚きの、しかし切実な想いを込めたご意見が飛び出します。

「観光客を呼び込む」ということの本当の意味とは!?
町並み保存地区で暮らす生活者として、今本当に伝えなければならない「声」をお届けします。次回、乞うご期待ください!

    続きの記事はこちらです。
  1. 重要伝統的建造物群保存地区を巡って探る「屋外広告のあるべき目立ち方」とは?- 広島県竹原市-【第二回】
  2. 重要伝統的建造物群保存地区を巡って探る「屋外広告のあるべき目立ち方」とは?- 広島県竹原市-【第三回】
    参考リンク
  1. 安芸の小京都 きてみんさい竹原
  2. 連続テレビ小説 マッサン
  3. たまゆら

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