のぼり印刷技術の2大巨頭。捺染と昇華転写の徹底比較から見えること。

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街中でのぼりを見かけるということは今や当たり前の光景かとは思いますが、実際そんなのぼりがどの様に作られているのかと言うと、これは馴染みが無いことだと思います。
弊社はのぼり製造業者として当然自社の製造ラインを持っているのですが、実はのぼりの製造方法というものは一つではありません。
大別して2種類。「捺染(なっせん)」と呼ばれる方法と「昇華転写(しょうかてんしゃ)」と呼ばれる方法を弊社では用いて日々のぼりを製造しています。

「のぼりの製造方法は2種類ある」という事実自体、あまり知られてはいないことでしょう(と言うか、実は他にも製造方法は幾つもあるのですが…)。情報的にかなりマニアックと言うか、日常の中で有効に用いるのも難しい情報だと思われます。
もちろん、のぼり製造に2通りの方法を用いていることにはそれなりの理由と事情があります。
捺染と昇華転写。それぞれの方法の特性を互いにサポートし得手不得手を補いあっている技術。
今回は弊社を支える二つののぼり印刷技法についてそれぞれ紹介してみたいと思います。

安い、早い、綺麗。捺染は3拍子揃ったスピードスター!

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捺染は時に「シルクスクリーン印刷」と呼ばれています。
なんとなくですが、まだ「シルクスクリーン」という呼び名の方が浸透しているイメージもあるのですが…う~ん、変わらないかな…
どちらにせよ、普段日常会話の中ではなかなか登場しない単語ですね。

捺染について簡単に説明しようと試みる際に、以前はよく「プリントゴッコ」という理想科学工業が1977年に製造および販売開始した家庭用小型印刷機を用いていたと言う話を耳にします。
というのも、捺染には「製版」や「印刷」と呼ばれる工程があるのですが、ほぼ同じ内容の作業を「プリントゴッコ」を利用する上で求められていたからです。
ご存知でしょうか?プリントゴッコ。以前は主に年賀状作成シーズンにその威力をいかん無く発揮していたようです。

ですので、捺染という耳慣れない、馴染みの無い言葉や技術であっても「プリントゴッコみたいなモノですので…」と言ってしまえば、それは間違いではないですし、相手にもイメージがよく伝わっていたのです。

が、しかし…時の流れとは無情なもので、時代の移ろいと家庭用インクジェットプリンターの普及によってプリントゴッコのシェアは順調に縮小してゆき、根強いファンから惜しまれつつも2012年に全ての事業が終了してまいました。
最近では「プリントゴッコ」自体に馴染みの無い世代の方も増えてきたらしく、そんなジェネレーションギャップに営業担当者が説明に苦慮しているという話を聞いたりもしています。

ですので…、この場においても幾らかは簡単にザックリ捺染の説明させていただきます。
捺染では、まずのぼりの印刷に必要な色一つ一つに対して版と呼ばれるメッシュ状態の薄い布を張った版と呼ばれるものを用意します。
そこにインクが「浸透する箇所」と「浸透しない箇所」を印刷の柄に準じて作成した後、そのインクの浸透する箇所に添って印刷が行われる技術です。
因みに、この「メッシュ状態の薄い布」の質感がシルクの様であることから、シルクスクリーンという別名で呼ばれているのです。

実際のところ、捺染では本来もっと様々で複雑な工程があり「できればプリントゴッコで説明できると楽なんだけどなぁ」と思わず溢してしまいそうで、純粋なファン意識とはまた違った角度からも復活を願っています。
そのような時代背景を知ってしまうと、捺染もトレンドとは言えないんじゃないかと思われてしまいそうですが、なんと弊社では未だ現役バリバリ。
家庭用年賀状プリント業界ではインクジェットの勢いに辛酸を舐めた捺染ですが、のぼりの世界ではまだまだ第一線で活躍しています。
もちろん、そこには幾つかの理由がありますので説明しましょう。

まずはなんと言ってものぼり生産スピードの早さが上げられます。
通常のよく見るサイズののぼりであれば1時間で800枚は余裕を持ってこなせます。これはもう圧倒的に大量生産向けであることを示しています。
また一度版を作ってしまえば、あとはのぼりを刷れば刷るだけ当然一枚あたりの単価も低く抑えることが可能です。
そして、以前では捺染ですと写真や複雑なイラストのような図柄をのぼり生地にプリントすることが難しい時代もあったのですが、現在では特殊な製版方法によって精密な写真レベルの表現もクリアできるようになりました。
早くて安くて仕上がりも綺麗となれば、これはもうのぼり印刷で向かうところ敵無しと言えるでしょう。

しかしながら如何なるものにも欠点は付き物で、捺染にも苦手なコトがあります。
それは大量生産が得意な反面、少量ロットののぼり生産には不向きということです。
捺染の宿命として、プリントに必要な色毎に版を用意しなければなりません。そのコストをカバーするには1枚2枚の印刷ではかなり割高になってしまいます。
原則的に4色なら4枚、8色なら8枚の版が必要となりますので、当然色数で値段が変わるので注意が必要。
捺染のポテンシャルを十分に引き出すには、どうしてもまとまった枚数という制約がついてくるのです。

一枚入魂!熱い思いでのぼりを染める昇華転写は優秀なコストリーダー!

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弊社で導入しているもう一つののぼり印刷技術が「昇華転写」と呼ばれるものになります。
簡単に説明しますと、一旦、転写紙と呼ばれる特殊な用紙にプリンターで図柄を印刷し、その紙とのぼり生地を熱々の転写機に巻き込みます。
その際に転写紙から気化したインクがのぼり生地の分子構造にまで入り込んで染めるという技術です。
…大丈夫ですか?思わず分子構造なんて言ってしまいましたが、ついて来ていただいていますでしょうか?

ザックリとさらに細かいところを省略して説明しますと、熱と圧力で紙に乗っているインクを気化させて密着した生地を染めるというプリント方法だということです。
ここでいう「インクが気化する」という現象を「昇華」と呼び、それによって紙に印刷された図柄をのぼり生地に「転写」させるので、「昇華転写」という呼び名がつきました。

そして家庭用のインクジェットプリンターを頭に浮かべてもらえても分かりやすいかと思われますが、転写プリントに版という概念はありません。これが捺染との大きな違いと言えるでしょう。
したがって色数の制限もなし。乱暴に言えばどの様なデザインであっても転写プリントすることが可能なのです。
したがって捺染が不得手としていた少数のアイテムの制作にも効果絶大。ワンオフで凝りに凝ったデザインともなれば、そこは昇華転写の独壇場です。
そして昇華転写で扱える生地の種類は捺染と比べても大変豊富です。
綿や絹など自然由来の生地は難しいですが、ポリエステル原料であれば大体大丈夫。
昇華転写は非常に自由度が高い印刷方法と言えるでしょう。

ただ逆に今度は大量生産に向かないと言う弱点が出てきます。捺染が1時間で800枚程度ののぼり印刷が可能なのに対して、転写は1時間50枚程度が現実的な数字です。
また、枚数の大小で1枚あたりのコストが変化するものでもないので、昇華転写だとどうしてものぼり1枚あたりの単価が高くなってしまう宿命があるのです。

いわばアナログとデジタルの対比構造。使い分けてこその活路を見出すということ。

捺染と昇華転写。
それぞれののぼり印刷方法の特徴を簡単に説明してきましたが、なんとも上手い具合に正反対な技術がそれぞれに進化してきたものだと思います。
ただそのような中でも、のぼり業界でも時代の流れなのかジワジワと昇華転写の需要が伸びつつあるのかという実感もある今日この頃。
昨今のデジタル技術への移行が進む潮流はのぼり印刷の世界でも同様なのでしょう。
加速度的に進化する技術の発展を見ていると、そのうち捺染機レベルのスピードでのぼりのプリントが可能な転写機なんてものが登場なんて未来も、実はそう遠くは無いのかも知れません。

現在では絶版となってしまったプリントゴッコですが、インターネットで調べてみると「プリントゴッコ展」といったファンによる個展も行われている様子を目にしました。
こちらはこちらで独特の味わいがある出来栄えの作品が多数紹介されていました。
デジタル技術の移行が推し進められる昨今ですが、そんな中で逆説的にアナログによる味わいや楽しさと言うものを見つめなおす機会もまた貴重なものとされ新たな価値を創造しています。

デジタルとアナログそれぞれの特性を理解し上手に使い分けていくバランス感覚、或いは双方の最適なハイブリッドによるシナジー効果。
今後のぼりを作り続ける上であっても、その手段としての最適値を探る知識と感覚はより一層求められることと思われます。
我々も今回、自社が持つのぼり製造技術を纏めていく中で、それぞれの特性をよく理解し、活かし方とその発展について考え続ける必要性を感じました。

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