学校、生徒、地域で取り組む「躾(しつけ)の三か条」という驚きの教育効果!

石川

こんにちは。ポップジャパンの石川です。

今回は広島市中区にある広島市立神埼小学校が取り組む驚きの教育方法について紹介します。

広島市立神崎小学校では、「躾(しつけ)の三か条」という取り組みを数年前から実施されています。

 

その内容は、

・はっきり返事をする

・進んで挨拶をする

・履物を丁寧に揃える

といった、生活を行う上での基本的であり、そして大切な3つの心構え。

 

一見すると「当たり前のことだし」と言われそうなことですが、しかしここを徹底しながら、さらに「笑顔輝け!神埼っ子」運動の取り組みとして「神埼っ子の誓い」を教え込むことで、地域の人たちからも一目置かれるほど児童たちの行動や心構えに変化が生じたと聞きました。

 

ポップジャパンも、この活動の一環として、躾の三か条を明文化したのぼりを製作し、学区内に立てました。

今回ののぼりラボでは、そんな教育の基本から実直な方法で子どもたちを育て見守る神崎小学校の「髙西実(たかにしみのる)校長」にお話を伺いました。

躾の三か条とは

石川「今回はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。早速ですが、躾の三か条とはどういったものなのでしょうか?」

 

髙西校長「神埼小学校は平成25年度から『志高く美しく』という校訓を学校の教育目標だけではなくて、神崎学区の教育目標とし、校訓の碑も立てていただきました。」

石川「この写真に載っている碑ですね」

神埼小学校

髙西校長
「そうです。神崎小学校は『夢や志を持ち、共に未来を切り開く子供の育成をする』ということを学校だけではなく、家庭や地域とも一体となって進めることを決めました。広島市が進める「町ぐるみの教育」の体制をつくったワケです。しかし組織ができても肝心なのは教育内容です」

石川「確かに、そこが一番大切ですね」

髙西校長「そこで神埼小学校区では、『夢や志を持ち、共に未来を切り開く子供の育成をする』具体的な取り組みとして、『躾(しつけ)』という生涯に渡って役に立つ基本的な態度が子どもたちの身に付くようにしようと考え、沢山ある躾の中から3つの内容に絞ったのです。」

 

石川「その3つというのが、
・はっきり返事をする
・進んで挨拶をする
・履物を丁寧に揃える
ということなのですね。なぜこの3つだったのでしょうか?」

髙西校長
「この3つの躾は、中国の古典の中にも出てくる内容でして、当時の一般庶民から貴族階級までが、幼いころにこの躾教育を受けていたとあります。日本でも森信三(もりのぶぞう)(通称:しんぞう)という国民教育の父と呼ばれている方が提唱されてもう7、80年の教育が日本中で行われ成果があがっています」

石川「躾にもハッキリとした歴史があることに驚きですが、この3つの躾に込められた真意は何なのでしょうか?」

髙西校長「はっきり返事をする』という躾には、返事をするために必要な素直な心を養うという意味が込められています。『進んで挨拶をする』の背景は、相手のために行動する積極的な心を養うという意味がありますね。そして『履物を丁寧に揃える』には、自分の行動を最後まで丁寧にやり遂げるという心を養うという意味があります」

石川「どれも子供の心を豊かに養おうという意図が込められているのですね」

髙西校長「そのような背景もあって、神崎小学校では直接的にこの3つの躾に注力して取り組もうと決めました」

躾の三か条を実現する笑顔の心構え「神埼っ子の誓い」

 

石川「学校のみではなく地域や保護者の方々と一体になって子どもたちに躾を身につける運動となると、足並みを揃えることも難しかったのではないでしょうか?」

髙西校長「確かに子供会や地域のスポーツチームなどの団体が子供のために色々な教育をしてくださっていました。そこで皆が一つの方向を向いた教育を実行するために、『神崎っ子の誓い』として6つの決まりを設定し、地域の教育方針として位置づけてきました」

神埼っ子の誓い

1.自分に負けては なりません

2.嘘をついては なりません

3.いじめをしては なりません

4.卑怯であっては なりません

5.無作法であっては なりません

6.父母を愛し、年上を敬い、先生を尊ばなければなりません。

石川「「躾の三か条」と「神埼っ子の誓い」を教育の要とされたわけですね。具体的な取り組みとしては、どんなことがあるのでしょうか?」

髙西校長「低学年である1,2年生では『生活科』という授業がありまして、家庭での自分の立場や役割とか家族の大切さを学んだり、身近な地域の人達に自分たちが支えられて生きているということを学んでいます。そして2年間の学習の最後には『家族に感謝を伝える会』を設けています」

 

石川「これは僕が子供に言われたら感動して泣いちゃうやつですね」

髙西校長「さらに3,4年生は社会科の授業がありますので、地域から広島市にいたるまで、自分たちを支えて下さっている方々の勉強と『心を育む講演会』ということで、『盲導犬の普及に取り組んでおられる方』のお話を聞くなど、学ぶことの大切さを教えながら、地域での奉仕活動も毎月行っています。4年生では『1/2成人式』という自分の夢を語る場を設けています」

 

石川「『1/2成人式』?。。。。あ、なるほど!ちょうど10歳だからということですね。20歳の半分だから」

 

髙西校長「そうです。そして高学年である5,6年生になると、『国際プロダンサーの方』や『キャビンアテンダントの指導者の方』からお話を聞き、挫折から立ち直るパワーについてや、相手の気持ちを考えながら仕事をすること、命を守るために覚悟を持って仕事をすることの意味について学びます。」

 

石川「大人としても聞いておきたい、得るものが沢山ありそうな内容です」

 

 

髙西校長「6年生では総合的な学習の時間として『僕たち私たちの神崎未来プロジェクト』に取り組みます」

 

 

石川「未来プロジェクトってすごいですね。どういった内容なのでしょうか?」

 

 

髙西校長「これは、神埼の地域をより良くするために、実際に地域を回り、課題を見つけてそれを解決するための方策をチーム毎に考えて地域に発信する活動ですね。その一連の取り組みの最後に立志式と卒業式を行い、卒業を見送るのが本校ならではのキャリア教育と言えます。その柱になるのが『躾の三か条』ですが、その他にも神崎小学校では『神埼っ子の朗唱24編』というもの行っています」

朗唱(ろうしょう)がもたらす驚きの効果

石川「ちょっと待って下さい。取り組みの厚さが凄すぎて圧倒されていますが、『朗唱24編』というのは、子どもたちが詩を朗唱するということですか?」

 

髙西校長「そうです。1年生から6年生まで各学年で4つの古典を暗唱して、朗唱できるようにしています」

 

 

石川「ただの詩ではなく古典ということに驚きました」

 

 

髙西校長

「毎朝学年ごとに朗唱する時間を設けています。人生の指針になる言葉を子どもたちが身につけ、礼儀正しい生活を送りながら、奉仕の心に必要な資質を養いながら6年間を過ごすことができたらと考えています。」

 

石川

「朗唱に取り組んでいる学校というのも珍しいのではないでしょうか。少なくとも僕が小学生の頃は、無かったですね」

 

髙西校長

「当初は先生たちも『何故こんなことをするのか』と、理解できていなかったと思います。しかし、朝みんなで服装と姿勢を整えて、声を揃えて朗唱するという時間を持つことが、その日1日を充実した気持ちでスタートできるということになります。そしてこの朗唱の効果として、授業自体が崩れなくなったというのは注目してもらいたいですね」

 

石川

「朝のスタート時から気持ちが整うと、子供たちの授業に対する気持ちの入り方が違ってくるのでしょうか?」

 

髙西校長

「そうですね。それに『難しい言葉を覚えることができた』ということが、自分に対する自信となり、、自分をコントロールする力になります。声もハッキリと出るようになって自己表現がちゃんと出来るようになりました。毎日中庭や運動場を歩いていると、朝の会が始まりあちこちの窓から子どもたちが朗唱する声が聞こえてきて、これが非常にいいんです」

 

石川

「いいですね。光景が目に浮かびます。そして、その集大成が、この『人生の道標』という本になるわけですね。こちらを使って実際に授業も行われていると聞きました」

 

 

髙西校長

「校訓の『志高く美しく』の意味や、校歌や校章旗に込められた考え方、『躾の三か条』の真意についてなどが書かれています。例えば挨拶ひとつでも、『元気に挨拶しましょう』ではなくて、『自分から先に立ち止ち、相手の目を見て、お辞儀をして挨拶をしましょう』という神崎式の挨拶を奨励しています。返事もそうですね。返事をしているのかどうか分からないようなモノではなく、短くハッキリです。履物を揃えることは基本。今では教室のロッカーや掃除道具入れ、机、椅子も含めて揃えることが大事なのだと教えています」

 

石川

「自分たちも振り返ってみると『挨拶をしましょう』とか『片付けをしましょう』と言われてはきましたが、そこにある意味まで深く教えられてはこなかったかと思います。その一つ一つの意味まで落とし込む教育は子どもたちも納得して学べる仕組みですね」

 

髙西校長

「子どもたちが道徳の時間に使うだけではなくて、中学、高校に進んだ時も側に置いておいて欲しいと思います。保護者の方にも読んでいただきたいですね。そして何より、先生たちに読んで頂きたいと考えています。内容を理解していただいたうえで指導し、子どもたちも言葉を覚えるだけではなく、生活の色々な場面で立ち返り、考えていくという営みが続けばいいと思っています」

 

石川

「まさに人生の教科書として何回でも読み返す本となっているのですね」

 

 

周りの地域も巻き込んで起こる変化の連鎖

 

髙西校長「この様な取り組みの目に見える成果の一つとして、挨拶がよく出来るようになってきたという嬉しい報告をご近所の方からいただくようになりました。また、修学旅行の様子を見ると、旅行先でも自主的にスリッパを揃えています」

 

石川

「学校の敷地の外でも、しっかりと教えが活きているのですね」

 

 

髙西校長「修学旅行に同行していただいたカメラマンの方など、外部からの目で見ていただいた感想をコメントとしていただいておりますが、『バスの中でもホテルの中でも、どこに行っても見ていて気持ちが良かった』と聞いています。礼儀正しさとかハツラツとした姿とか、そういったところをご評価いただいていますね。お祭りの時でも、小学生の子どもたちが靴を揃えていたら、それを見ていた幼稚園など小さな子どもたちが、その真似をして靴を揃えていたそうで、翌朝その報告をして下さった方も居ましたよ」

 

石川

「学校での教えが子どもたちの普段の行動として活かされ、さらにその効果は子どもたちの回りにも広がっているのですね」

 

髙西校長

「神崎小学校の地域では、中学生と小学6年生が地域清掃をすることがあります。中学生となると大人に反抗しがちなものですが、そういった時に小学校の先生が気を利かせて6年生だけ起立させて朗唱させました。しかし、突然のことだったにも関わらず、6年生は起立して運動場に響き渡る声で朗唱して一気に雰囲気が変わりました。またそれを地域の方が見られていて、これも非常に喜ばれておりました」

 

石川

「取り組みの効果が、児童たちだけに留まらず周囲にまで波及するというのは凄い!」

 

 

髙西校長

「他にも広島市中区の子供会は毎年11月に文化祭を行うのですが、神埼小学校では『しつけの三箇条』をスタートさせた年から、『しつけの三箇条を取り入れた発表』を意識して行いました。『自分に負けてはいけない』という意味を紐解くために、自分たちの生活に当てはめたストーリーを考えたりですね。そういう学校と地域が一体になった活動ができてきているなと思います。それもPTA、子供会、連合町内会の方々が本当に理解して下さって、あらゆるところで取り入れて下さっているからですね」

 

石川

「地域の皆さんが神崎小学校の取り組みを理解してくださり、協力して下さっているのですね。」

 

 

神埼小学校を飛び出す『笑顔輝け運動』を支えるのぼり旗

髙西校長

「3年前からは、神崎小学校だけではなく、江波中学校区にある3つの小学校全体で取り組む活動にシフトアップしました」

 

石川

「確実にレベルアップしてるじゃないですか!やはり神崎小学校の効果を見て「ウチでもやりたい!」という声があったのですか?」

 

髙西校長

「3つの小学校から1つの中学校に進学するので、神崎小学校だけが良い取り組みをしていても、中学校に上がれば全体の3割ですからね。効果が薄まってしまいます。思春期の難しい子どもたちですからね。うまく授業にならないことも時にはあります。ですので、小学校できっちり同じ様な規律を学んできた子どもたちが集まれば、良いスタートが出来るだろうということで『江波中学校区、笑顔輝け運動』がスタートしたのです」

 

石川

「中学校単位の活動になりました。『笑顔輝け』というのもいいですね。実際に効果はでているのでしょうか?」

 

髙西校長

「担任の先生たちが「最初の授業スタートがしっかり始められ、そして終えることができる」と言っていました。3校でしっかり力をつけた結果が見て取れますよね。」

 

石川

「これは現場の声ですから、確実な成果ですね」

 

 

髙西校長

「この状態を崩さず、さらに育てていかなければということで、強い気持ちと責任を感じているとのことでした。この取り組みはお陰さまで広島県共同募金会の協力もいただいて、江波中学校区中にのぼり旗を立てさせていただくことができましたよ」

のぼり

石川

「ポップジャパンで製作したのぼり旗ですね。ありがとうございます!のぼり旗の効果は感じられますか?」

 

髙西校長

「保育園とか公民館や児童館、集会所などにも立てていただきましたからね。子どもたちは少々の遠出でも、のぼり旗が目に入るという環境をつくることができました」

 

石川

「まさに地域としての一体感が、のぼり旗によって演出され可視化されたということですね」

 

 

髙西校長

「子どもたちのランドセルや各地域の役員の方もプレートを身に着けています。各ご家庭に配布しているものもありますし、保育園、幼稚園との連携も進んでいます。言わば保育園、幼稚園、小学校が中学校とつながるように、のぼり旗の下に集っているということですね」

 

石川

「これ以上無くお役に立てていることに、僕は今とても感動しています」

 

 

髙西校長

「小学校の中でも上級生がしっかり挨拶をする姿を見た新1年生もまたきちんと挨拶ができるようになる姿が見られます。そういった『上級生から学ぶ』または『真似る』というコトが出来てきているということが、一つの成果ですね。体育館で学校朝会をする時も上級生の出している雰囲気で、下級生のゴソゴソした動きが無くなるなど神埼小学校では良い状態が保たれています」

 

石川

「何て言うか、子供の躾としての取り組みとして、これはもう無敵ですね。しかも中学校に進学しても、同じことを学んだ他校のからの生徒とも机を並べるなんて仲間意識の形成にも有効だと思います」

 

髙西校長

「『しつけの三箇条』を取り入れることによって子供が変わり、子供が変わる姿に勇気をもらった地域の方々が子供のために学校のために地域のために働いて下さっている。そういうお声や姿を見させて頂いて、本当にこの学校で過ごす時間は楽しいですね。「校長は大変でしょう」と言って下さる方もいますが、私は本当に楽しいです」

 

石川

「その活動に微力ながら協力させていただいていることを誇りに感じます。この活動が、今後は中区から広島市、そして広島県、中国地方、全国へと広がっていく未来が見えましたが?」

 

髙西校長

「いや、もちろん子どもたちの変容も嬉しいのですが、これらが実現できたことは神崎小学校の先生方の素晴らしさ抜きでは有りえません。先生たちも本校の取り組みに使命感を持っておられて、神埼学区から中区、広島市へと発信していくんだという使命感を抱いておられます。子供が変わっていくことで、自分の思う教育ができるようになり、自信と誇りが持てるようになるのです」

 

石川

「学校外からの評価や子どもたちの良い成長というものが、先生方という教育者としての喜びにつながれば達成感も大きいことでしょう。」

 

髙西校長

「実を言うと、今回ののぼり旗が非常に良いんです。最初は看板かなとも思っていたのですが、やはりはためくのがいいんですよね」

 

石川

「本当に嬉しいお言葉。作り手の喜びです。他にも何か『こんなアイテムが』なんて想いはありますか?」

 

髙西校長

「のぼりとランドセルのものみたいに、やはりどこかに焦点化するアイテムは効果があると分かりました。次のステップとしては校訓の入ったワッペンを考えています。ただ、なかなか採算が合わなくて。。。」

 

石川

「お任せ下さい!早速持ち帰ります!」

 

 

子どもたちを正しく育てるために考え出された「躾の三か条」は確実な成果をあげ、その取り組みは周囲に良い効果を波及しながら前進していました。

その活動の一端としてのぼり旗を提供させていただいたことは、ポップジャパンとしてもとても名誉なことです。

今後は活動の幅が広がるにつれて、あらたなサポートアイテムも必要になりそうな予感!

ポップジャパンは全力で神崎小学校の取り組みをサポートします。

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