職人技とデザインの融合!世界にひとつだけの店舗装飾誕生物語[後編]

奥河内さんと石川

こんにちは。ポップジャパンの石川です。
ちょっと薄暗い写真で失礼していますが、今回の取材記事は、前回に引き続き「店舗装飾」の一部として巨大なランプシェードをポップジャパンも協力して造り上げたお話です。

前回記事
職人技とデザインの融合!世界にひとつだけの店舗装飾誕生物語[前編]

前回の記事では、ランプシェードの制作にまつわるお話を、「作る人」の立場からお伝えしましたが、今回は実際に「使う人」である「モトロク飲食店」の「奥河内浩明(おくごうちひろあき)さま」にお話を伺いました。

「モトロク飲食店」という、一風変わった店名に込められた想い、お店作りとこれから目指す風景について、リラックスした空間の中で語られる独特の空気感をお楽しみ下さい。

ランプシェード

「こだわらない」というスタンスから生み出される「そこにある」という空気

石川「本日は取材の時間をいただき、ありがとうございます。早速ではありますが、最初にどうしても「モトロク飲食店」というお名前についてお尋ねしたいと思っていました(笑)他にない、面白い店名ですよね。由来を教えていただけますでしょうか?」

奥河内さん「もともと個人店として4,5年前からお店をしていますが、最初のお店の名前が『6(ロク)』だったんです。数字の6ですね。で、移転してリスタートするときに『店名はどうしようかな』って考えました。本当は『6』のままでも良かったんですけど」

モトロク飲食店

石川「あえて、『6』ではない名前にしたのですね?」

奥河内さん「前のままだと、インターネットで検索した時に古いお店情報が残ってることがあるじゃないですか。移転前の住所とか、電話番号とか」

石川「たしかに、「紹介サイト」に掲載されている情報が、古いまま更新されてなかったということは時々ありますね」

奥河内さん「そこで、もしお客さんが古い住所のトコロに行って「行ったけどお店が無かった」なんてなったら申し訳ない。でも『6』を残したいなって気持ちもあったので『もと6だったお店』ということで『モトロク』という名前になりました」

石川「なるほど!『モトロク』の謎が解けました!しかし、なぜ最初のお店は『6』という名前だったのでしょうか?」

奥河内さん「僕は名前自体にこだわりが無くって、『6(ろく)』ってつけたのも簡単な名前にしようと思って数字の6にしたんです。数字だったら簡単ですよね、別に幾つだったか覚えてもらえなくても構わないし、子供でも誰でも分かるカタチが良かったんです」

石川「『数字のカフェ』みたく説明することもできそうですね。」

奥河内さん「数字にしようって決めた時に、『自分の好きな数字』っていうと6だったんです。今までの人生を振り返ったとき、結構6って数字が節目節目にあって。それと『6』ってカタチも好きなんです。丸みがあって、柔らかい印象だし」

石川「1とか4とかだと直線的ですからね」

奥河内さん「それと、お店のコンセプトとして『10段階評価で6くらいを目指す』てのがあります。真ん中よりちょっと良いトコロ。それは敷居が低いって意味で、これが10点満点を目指すと僕としては気合が入りすぎだし、だったら60点でギリギリ合格くらいの方が肩肘張らないお店になるのかなって思ってます」」

店内

石川「なるほど。お店の方向性として、気取らない落ち着ける空間。肩肘張らずにリラックスできる時間を提供したいという意味が込められているんですね」

奥河内さん「そうですね。だからお店としてはクリスマスディナーとか、お店の何周年記念みたいなことも僕はしません。普段来ているお客様が『今日はクリスマスだから行きづらいな』って思われたら嫌なんです」

石川「常連のお客様だったり、地域の方々にとって常にそこにあるお店というか『いつで変わらず安心できるお店』を目指しているということですね」

奥河内さん「まぁ、常連の人達から「今日はクリスマスのディナーにしたい」って言われても、それはそれでアリなんですけどね(笑)。いい意味で『なんでもないお店』でありたいと思いますね」

石川「それから『モトロク飲食店』というお名前の『飲食店』という表記も珍しいなと思いました。例えば安易ですが『カフェ・モトロク』なんて名称になりそうなものですが、敢えて『飲食店』とされた理由はあるのでしょうか?」

奥河内さん「新しいお店が出来たときって、みんな「何屋さんなのかな?」って興味は持ちますよね。だけど「何屋か分からないから入りづらかった」とか「カフェっぽいと思ってたら、実はお洒落な事務所だった」なんて話もよく聞きます。なので、お客さんに気楽に入ってきてもらうには『飲食店』とつけてしまうのが、一番分かりやすいかなと思ったんです」

石川「確かに、これ以上無く分かりやすい名前だと思いました」

お店に馴染む巨大ランプシェード(そして思わぬ効果について)

石川「続いて、ランプシェードのお話をお聞かせいただきたいと思います。このような特殊なランプシェードを設置しようと考えられたのは奥河内さんのアイディアだったのですか?」

奥河内さん「いや、僕は正直ここまでのものが出来るとは思っていませんでした(笑)納品していただいて、はじめてこの大きさにビビりましたね」

石川「僕も製作時ものを拝見しましたが、これがお店にぶら下がっている姿を想像できない大きさでした」

奥河内さん「確かに今の物件は天井も高いし、前のお店でも小さな照明を幾つかぶら下げていたんですけど『大きいモノを下げた方が空間も活かせるし、インパクトもあるんじゃないか』と言われまして。デザインのことなどは僕もよく分からないのでお任せしたんですが、そしたら、コレですよ(笑)」

石川「続いて、ランプシェードのお話をお聞かせいただきたいと思います。このような特殊なランプシェードを設置しようと考えられたのは奥河内さんのアイディアだったのですか?」

奥河内さん「いや、僕は正直ここまでのものが出来るとは思っていませんでした(笑)納品していただいて、はじめてこの大きさにビビりましたね」

石川「奥河内さん自身も驚かれたということですが、お客様からの反響も大きのではないですか?」

奥河内さん「みんな初めて見た人は驚きますし、色々聞かれますね(笑)「どこに売ってるの?」とか。「売ってないから作ったんです。作ったのは僕ではないですけど」なんて言ってますが。あと、お店でウクレレの教室も開催してるんですけど、このランプシェードが大きくて、反響いいんです。だから『上手になった気がする』って言われる人もいます(笑)」

石川「それは、思いもしなかった効果ですね(笑)」

奥河内さん「でもやっぱり見た目のインパクトは大きいですね。だけど色合いや質感に温かみがあると言うか、不思議な空間演出になっていると感じます」

石川「なにしろこの大きさですので、お店の中に設置された時に目立ちすぎるのではないかと心配した部分もありました。だけど、こうして見ると非常にお店の雰囲気や空間とマッチしていて、杞憂だったなと安心しました」

奥河内さん「この天井の高さがあったからこそかも知れませんね。多少大きいもののほうが馴染みやすかったのでしょう。もちろん、このランプシェードも含めての店舗デザインでしたからね。後付で設置しちゃうとまた印象が変わってしまっていたかも知れませんね」

石川「そこはやはり、プロの技といったところでしょうか」

奥河内さん「そうですね。トータルのデザイン的にはすごく満足しています」

奥河内さん

石川「こちらはモトロク飲食店のショップカードですが、ここのデザインモチーフもランプシェードなんですね」

奥河内さん「最初は違うデザインでしてた。大体のイメージは同じでしたけど、ランプシェードをモチーフにはしていなくて。前のお店から扉をそのまま持ってきたんですけど、アールが効いた入り口の扉はこだわりだったので、デザインも最初は扉のイメージでした。だけどデザインをしてくれていたデザイナーの友人が『こっち(照明)にしたほうが良いよ』って、急遽変更になったんです」

石川「そんな照明も馴染んで邪魔にならない店内ですが、お店づくりにおいてのこだわりやコンセプトなどはあるのでしょうか?」

奥河内さん「いや。。。うーん、特に無いんですよね。僕はゼロから何かを作り上げるのは全く不得手でして、だけど既にあるものに何かを付加していくことは好きなんですね。なので何かを狙っちゃうと、変なことになっちゃうんですよね。「これでいいかな」ってトコロで決めているんです」

石川「ある意味で自然体ということでしょうか?」

奥河内さん「あ、でも椅子だけですね。椅子はしっかり決めています。それとテーブルの高さ。高さによって男性も女性も座れる高さってありますから。そういった点は気を使いますけど、だけどインテリアとして見ようとする意識はあまり無いんですよね。だから平気で『招き猫』とか置いちゃうんですよね(笑)」

椅子とテーブル

招き猫

石川「ポップジャパンは装飾なども扱っているメーカーですので、色々なところで聞いているのですが、モトロク飲食店ではいい意味で「気を使っていない」というのは新鮮に感じました。ただ、実は先ほどからお店の所々に「6」と書かれたアイテムが置いてあるのですが、こちらはどういったものなのでしょうか?」

奥河内さん「あ、あれはですね。お客さんが前の店をすごく愛してくださっていて、「6」て書いてある物を見かけてはプレゼントしてくださるんです。『うつわを見つけたよ』とか『レザーで6ってなってるのがあったよ』とかって。だからこれは僕が用意したものではないんです」

石川「お客様がお店の演出の一つとして持って来てくださっているということで、お客様もまたお店づくりに協力して下さっているということなのですね」

奥河内さん「それはありますね。それは『飲食店』って名前をつけた理由にも関わっていて、カフェだと捉えられるのなら、それでも良いし、居酒屋と思ってくださるのなら、それでも構わない。つまりお客さんが決めてもらえばいいのかなってことなんです。本当は自分で『ウチは○○です!』て言った方が分かりやすいのかも知れないですけど、そこは徐々に決まっていけば良いんじゃないかなって思いますね」

石川「そういう意味では『飲食店』という言葉の持つ幅感はちょうど良いですね。それから、もう一つ気になっているところがあって、こちらの『5号室』て書かれたプレート、これはどういったものなのでしょうか?」

奥河内さん「これでしょ?これねぇ…なんなんでしょうね(笑)」

5号室

石川「(笑)」

奥河内さん「いや、以前はこのプレートの上に『トイレ』ってプレートを貼っていたんです。でも、そのトイレのプレートは外しちゃって、だけど『5号室』は残っちゃったんですよね。そもそも僕が名前やインテリアにこだわりがなかったので、実はあまり気にしてないってのがあるんですよね。まぁ『トイレどこですか?』て聞かれた時に『5号室です』って案内しやすいんですが(笑)」

石川「なるほど、目印ということですね」

奥河内さん「あまり意味を持たさないんですよね。だから色々質問されても大した答えがなくて申し訳ないというか」

石川「いえいえ、だからこそ肩肘張らずにリラックスできる空間ができあがっているのだと思います」

地域に密着し、地域と共に在るお店を目指すこと

石川「モトロク飲食店というお店につきまして、今後はどのような場所にしていきたいと、展望をお持ちでしょうか?」

奥河内さん「そもそも、このエリアに移転してきたのも、この辺りにお昼を食べることが出来るお店があまりなくて、このビルの施主さんから『一階に飲食店が入ってほしい、そしてお昼をしてほしい』というお話をもらったからなんです。なので、肩肘張らずに来ることができるお店というスタンスは絶対に崩したくありません」

石川「ここまでリラックスできる空間というのも、ありそうで実は結構貴重です」

奥河内さん「僕は飲食店は住んでいるエリアのインフラだと思ってます。そこには暇つぶしで行ってもいいし、大事な商談で利用してもいいし、ちょっとした時に思い出してもらえるものでいい。それは今のスタンスですし、目指すところも同じですね。大いに暇を潰しに来てもらえたらと思います。その結果、この地域で『あのお店があって良かったね』って思ってもらえたら、それが僕のやりたいお店です」

石川「ある意味で、究極的に地域に密着し「自然体のお店」ということですね」

奥河内さん「だから、モトロク飲食店の将来は今思い描いている姿とは結果的に違ってるのかも知れません。『飲食店はたくさんあるから、もう要らないよ』って言われたら、その時はまた違うことを始めるかもしれないし。それだけですね。その点に野望とかはないんです(笑)」

モトロク飲食店

石川「なるほど。その地域に根ざした『居心地のいい空間』を提供し続けたいということなんですね」

奥河内さん「そうですね。あとは、この一帯が『ハシゴ酒』ができるエリアになったらいいですね」

石川「ハシゴ酒ですか?」

奥河内さん「それが、ただお酒が飲めるエリアだと『あの辺は夜行くトコロよ』ってなりますから、お昼も充実することによって街としての清潔感も出ると思います。お酒も楽しめて、お昼にも困らないエリア。結果的に僕はそういう街に住みたいなって思います」

石川「自分が住みたい街を、お店を通して実現させたいということですね」

奥河内さん「だから、その時に僕のお店がどんなカタチでも構わないんです。極論、無くなっていてもいいんです。それがきっかけで『住みたい!』て思える街になるのであれば」

石川「自分のお店という存在も含めて、住みたいエリアを実現する。敢えて「野望」という言葉を使わせていただくと、とても大きな野望ですね」

奥河内さん「そうかも知れないですね。もしかしたら最後は不動産転がしてるかも知れません(笑)」

体の力を抜き、本当にリラックスした時間を過ごすことができる『モトロク飲食店』。
そこには店主奥河内さまの、肩肘を張らない「過ごしやすい街」を実現するという、平熱的でありながらも、大きな夢が宿っていました。

誰もがホっと一息付ける場所。
ポップジャパンがお手伝いしたランプシェードもまさに、そんな奥河内さまの心情に沿って、存在感を持ちながら周囲と同化し、今日も優しい光を照らしています。

この度は、取材にご協力いただきありがとうございました。

奥河内さんと石川

取材協力
[モトロク飲食店] 広島県安芸郡府中町青崎中24-28-1F
080-9130-0048
店主:奥河内浩明さま

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