職人技とデザインの融合!世界にひとつだけの店舗装飾誕生物語[前編]

モトロク飲食店前

こんにちはポップジャパンの石川です。このポーズ分かりますか?
実はこれ、数字の6を表していまして、今回は広島市安芸郡府中町にあります「モトロク飲食店」をお邪魔しました。

モトロク飲食店:6
つまり、こういうことですよね

こちらの明らかにお洒落な「飲食店」。元々は「6(ロク)」という店名で運営されていたものが、こちらに移転して「元6だったお店」ということで、「モトロク飲食店」としてこちらにオープンされたのだとか。
そんな6に不思議なゆかりのあるお店は、ゆったりとした時間の流れるアットホームでリラックスできる雰囲気ですが、実はポップジャパンが今回、こちらの店内装飾の一部について、お手伝いしました。

ランプシェード

この巨大なランプシェード。お店の中で存在感を放ちながら、しかし全体的に捉えると決して雰囲気の邪魔にならない佇まいは、まさに優れたデザインと職人技の成せる空気感。

今回ののぼりラボでは、こちらのランプシェードにまつわるお二人を取材しました。
一人目は、実際に制作されました。広島市立大学の永見文人(ながみふみと)教授。
そして二人目は、モトロク飲食店の店主である奥河内浩明(おくごうちひろあき)さま。

「作る人」と「使う人」。一つの物を通じ、それぞれの立場で語られる店舗装飾について。
今回は、「作る人 – 永見教授」のお話です。

金属の持つ表情を浮かび上がらせる楽しさ

永見教授と石川

永見教授への取材は、まだ肌寒い風が吹く3月の終わりごろ。
ランプシェードが完成し、大学の工房から運び出されてお店へと向かった直後にお話を聞くことが出来ました。

永見教授

石川「まずは、何よりも『お疲れさまでした』ですが、はじめに先生の簡単なプロフィールから教えていただければと思います」

永見教授「東京芸術大学 大学院美術研究科 工芸専攻(鍛金)を修了しまして、鍛金というのは「鍛える」という字と「金属」を組み合わせた言葉です。文字通り一枚の板を『焼きなまし』といって、バーナーで金属を焼いて柔らかくし、今度は『当て金』というものを使い、金槌で叩き金属を加工する。つまり、鍛えるんですね」

ハンマー

石川「金槌もすごい本数ですね。これらを鍛え方によって使い分けているということでしょうか?」

永見教授「そうですね。加工する形体や、作品表面の肌合い、いわゆる”味”を出すために使い分けています。」

石川「現在は広島市立大学で教鞭を振るわれている先生ですが、ズバリ!鉄や金属を作品として造り上げていく魅力はどこにありますか?」

永見教授「一枚の板だと、それは全くの平面です。それが少しずつ叩きながら加工することで次第に”立体的な形”となっていくことが面白いですね。自動車のボディーを造形している様な感覚ですね。」

石川「最初は一枚の板だったものから、徐々に立体になり、様々な表情が見えてくるのですね」

永見教授「そうですね。それから出来ていく過程での作業自体も楽しいですし、今回の制作の様に困難な問題が生じた時、様々な工夫をして自力で解決する事も楽しいです。」

巨大ランプシェードは、前例なしの難しさ!

永見教授と石川

石川「今回の創られたランプシェードについてお聞きしたいと思います。大変なお仕事だったと聞きましたが、最初にこのお話を聞いたときから大変そうな匂いは感じられていましたか?(笑)」

永見教授「正直、ちょっと軽く引き受けてしまったなーと」少し後悔しました(笑)同時に、ランプシェードということでお話を聞いたので、できるだけ軽く仕上げなければと思いました。」

石川「実際に人のいる場所、それも屋内となると、建物や安全への配慮は避けられませんからね」

永見教授「最初は1mmの厚さの板でスタートしたんですけど、直径50cm~60cmの円盤から絞ってみようとして、いざ焼きなましをして、当て金の上に置いたら、まるで『いなり寿司の皮』のようにクニャっとなってしまいました。叩く以前に、銅板自体が大きすぎて、自重に耐えきれなかったんです。そこで1.2mmの厚さの板で再スタートしたんです。」

石川「重さだけでなく、強度についても考慮しなければいけなくなったとは、本当に大変でしたね。今回のランプシェードのようなものを制作する機会は、けっこう珍しいのでしょうか?」

永見教授「薄い板であれだけの大きさのものを作るということは、あまり無かったですね。なので予測はしていましたが、ここまで大変とは想定外でした。いい勉強になりました(笑)」

ランプシェード加工

金属の可能性を探り、面白さと魅力を引き出すこと

ランプシェードと永見教授

石川「教授はこれまで幾つもの作品を創られてきたと思います。今回の巨大ランプシェード以外でも『これは大仕事だったな』と印象に残っているものはありますか?」

永見教授「そうですね。大学院の修了制作で大きな骨を造ったことは印象深いですね」

石川「骨!?金属で骨を造られたということですか?」

永見教授「骨を立てたようなカタチのものだったのですが、それが2.6mくらいありました。初めて大物に挑戦した作品で、それだけに一番『大変だったな』って記憶に残っていますね」

道具

石川「大きなものを造るときと、逆に小さなものを創る時では、難しさの違いはありますか?」

永見教授「大きなものを造っている時は、さながら『体当たり』をしているような感覚で、体力は使います。だけど意外とストレス発散にもなるんです(笑)」

石川「運動や筋トレに近いのかも知れませんね(笑)」

永見教授「逆に小さいものになると工芸品的になり、緻密な作業が必要です。だけど時間は大きいものも小さいなものも変わりませんね」

石川「今後、先生の方で新たに造り出そうとしているものがあれば教えて下さい」

永見教授「いつも出展している展覧会があるのですが、「水の循環」と「生命の起源」みたいなものから発想を始めたものを造りますよ」

石川「水の流れや生命を金属で表現されるのですか?」

永見教授「そうですね。作品の具体的な形で言うと「雲と雨」とか水滴が作品の中にあったりとかして、それが循環というかたちで、地面に雨が降って、またその水が昇っていくような作品とを造っています」

石川「僕の持っている「金属は固く冷たいもの」というイメージを大きく超えたお話で驚きました。しかし、今回のお話を聞いてから、今まで知ることのなかった金属の可能性を知ることができて、とても作品の完成が楽しみです。今回はお時間をいただきありがとうございました」

店舗装飾としてのアイテム、それも大学教授とのコラボレーションとしてランプシェードを作り上げる経験というものは、ポップジャパンとしても初めての試み。
教授も我々も、手探りで取り組んだ中で多くの経験・発見を得ることができました。

次回は、このランプシェードが設置されたモトロク飲食店の店主様にお話をお聞きします。

ランプシェード運び出し
無事に運び出されました。

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